時系列まとめ

早期スタートの背景:留学中に芽生えた「漠然とした不安」
——就活はいつ頃から始められたんですか?
「大学2年生の12月からですね。ただし最初は本格的な就職活動というより、インターンシップ先を探すところから始めました。」
R.Kさんが就活を意識し始めたのは、多くの学生よりもかなり早い時期だった。2年生からの就活開始は確かに珍しい。周りがまだ動いていない中で、なぜ彼女は行動を起こしたのだろうか。
「当時、私はちょうどカナダに留学中でした。日常の慌ただしさから離れ、比較的時間に余裕があったため、将来について深く考える機会が増えました。『この先どのような道を歩むべきか』という、未来に対する根本的な疑問が生まれてきたんです。」
留学という環境が、彼女に内省の時間を与えた。日本での慌ただしい大学生活から離れ、異国の地で一人時間と向き合う中で、自然と将来への問いが浮かび上がってきたのだ。
国際教養学部という特性も、早期行動の動機となった。
「私自身、特定の専攻が定まっていなかったこともあり、自分が『何をしたいのか』を少しずつ整理し、言語化していきたいと考えていました。周囲はまだ就職活動を始めていない時期でしたが、一歩早く動き出すことにしました。」
この時点での彼女の行動は、まさに「自分と向き合う」ことから始まっていた。明確な目標が見えない中でも、まずは動いてみる
——その姿勢が後の成功につながっていく。
動き出しを後押ししたのは外資系の早期募集
本格的に力を入れ始めたのは2月頃。まずは教育系スタートアップでのインターンシップを開始し、実際にビジネスの世界に足を踏み入れた。
「教育分野に対して深い関心を抱いていました。これまで課外活動として、全国の中学、高校で進路・キャリア選択に関する講演活動に従事してきた経験から、教育の社会的意義と重要性を強く認識していたんです。」
そして転機となる機会が訪れる。
「冬頃にマイクロソフトのインターン募集が始まって、当時時価総額世界一ということもあり、どんな会社なんだろうという好奇心から応募しました。」
早期に動いたことで、競争が激化する前に貴重な機会を掴むことができた。外資系企業の募集時期の早さを逆手に取った戦略的な動きだった。
「外資系は募集時期が比較的早いため、各社のスケジュールを確認しながら動いていました。ただ、特定の業界に絞るというよりは、自分が最も力を発揮できそうな環境はどこかという観点で、幅広く企業を見ていました。」
マイクロソフト長期インターンで得たもの:チームワークとグロースマインドセット
——マイクロソフトのインターンはどのような経験でしたか?
「2ヶ月間、フルタイムでインターンに参加しました。IT分野についてはほとんど知識がない状態からのスタートだったので、毎日が本当にチャレンジの連続でした。」
R.Kさんの挑戦は、まさに未知の領域への飛び込みだった。
「応募した企業は全体で5社ほどでしたが、実際に参加したのはマイクロソフトのみでした。2ヶ月間のフルタイムインターンで、非常に密度の高いプログラムだったため、他のサマーインターンに参加する余裕を確保するのが難しい状況でした。」
カルチャーショックから始まった成長の軌跡
外資系企業に対する既存のイメージは、実際の体験によって大きく覆された。
「外資系企業というと、個人主義的な働き方で、常に英語でのやり取りが求められるというイメージを持っていました。でも、実際にマイクロソフトで働いてみると、それとはまったく違っていました。マイクロソフトは『ビジネスは協働によるチームスポーツである』という組織哲学が深く浸透しており、協力しながら成果を出していくことが大切にされていると感じました。」
「所属部署を越えて、さまざまな社員の方々とお話しさせていただく機会がありました。面談をお願いした際には、役職や立場に関わらず皆さま快く対応してくださり、そうした風通しの良い企業文化に強く惹かれました。」
グロースマインドセットとの出会い
会社の核となるカルチャーの一つ「グロースマインドセット」は、R.Kさんの人生観そのものにインパクトを与えた。
「企業概要や組織の仕組みについて詳しく教えていただけるセッションがあり、そこで何度も強調されていたのが、『常に成長を目指す姿勢=グロースマインドセット』の重要性でした。この考え方は、自分自身の成長に対する向き合い方にも強く影響していて、今でも意識して大事にしています。」
同期の存在も大きな刺激となった。
「同期から受けた刺激は、本当に大きなものでした。それぞれ違う専門分野で高いスキルを持っていて、仲間たちの知識や発想には驚かされました。これまで出会ったことのないような学びや経験を持つ人たちと一緒に働けたことは、自分にとってすごく新鮮で、刺激的な経験でした。」
心理学バックグラウンドを活かした独自のアプローチ
専門知識で劣る状況でも、R.Kさんは自分ならではの価値の出し方を追求していました。
「最初の頃は、膨大なITの知識を身につけないと仕事が成り立たない、という思い込みにとらわれていました。ただ、メンターとの対話やマネージャーとの議論を重ねる中で、次第に『知識をインプットすることよりも、実際の業務を通じてアウトプットしていくことが大切なんだ』と実感するようになりました。」
「『自分にしかできない貢献は何か』を突き詰めて考えた結果、留学中に学んだ心理学の知識を応用し、チーム内のリレーションシップマネジメントに焦点を当てたプロジェクトを、自ら企画・実行しました。」
ITへの関心の高まり
当初、R.KさんはIT分野に対する知識はほとんどなかったものの、実際に業務に携わる中で、その面白さや可能性に惹かれ、次第に関心が深まっていったという。
「ITが社会にとって重要な役割を果たしているのは言うまでもありませんが、特にマイクロソフトは、クラウドをはじめとした情報技術のインフラを通じて、社会の基盤を支えていると感じました。テクノロジーの進化は日々めまぐるしく、そのスピードやインパクトを間近で実感できたことで、『イノベーションとは何か』という本質にも触れられたように思います。」
秋冬の選考と”幅広く飛び込む”姿勢
——秋冬インターンの選考は受けられましたか?
「2ヶ月間のインターンを経験したことで得られた情報量が非常に多かったため、その後は幅広い業界を見るというよりも、自分が実際に身を置いた環境と比較して、より良い成長環境があるかどうかという観点で企業を選んでいました。応募数自体はあまり多くありませんでしたが、一社一社を丁寧に見ていました。」
就活の軸:直感 × 環境フィット
——就活で大切にされていた軸を教えてください
「自身の直感や感覚的なフィーリングを大切にしていました。」
偏差値志向からの脱却
この価値観に至るまでには、大きな変化があった。
「直感を頼りにするという判断基準は、それまでの自分の意思決定の仕方とはまったく異なるものでした。それまでは、“この学校は偏差値が高いから”というように、社会的な評価や数字をもとに進路を選んできたんです。専門分野や中身については、正直そこまで深く考えていませんでした。」
「でもここ数年で、“直感的に合うかどうか”や“自分の感覚として納得できるか”といった要素の重要性を強く感じるようになりました。もちろん、論理的な言語化も大切ですが、それと同じくらい、感覚的な部分も自分にとって大事だと気づいたんです。だからこそ、就活ではこの直感の軸を意識して判断するようにしていました。」
会社選びの判断基準
会社選びの際には、具体的な判断基準として、人・カルチャー・成長環境の整合性を重視した。
「まず重視していたのは環境面です。会社のカルチャーやそこで働く人々など、外的な要素を意識して見ていました。その環境に自然と惹かれるかどうか、自分がそのビジネスモデルにワクワクできるかといった感覚も、判断の重要な基準としていました。」
この価値観の変化には、様々な経験が影響している。
「おそらく、友人との会話の中でさまざまな価値観を共有するうちに、『こちらの方が自分に合っているかもしれない』と感じる場面が増えていきました。また、実際に働く経験を通じて、『この環境の方がしっくりくる』と実感することもあり、そうした体感を重ねる中で、環境との相性を大切にすることの重要性に気づくようになりました。」
将来ビジョン
新卒で会社に入社後、どのような未来を描いていますか?
「入社後まずは、ビジネスのノウハウを吸収できるだけ吸収したいと思っています。現場での実践を通じて、力をつけたいです。」
長期:日本女性のロールモデル&教育改革への志
R.Kさんの将来の夢は壮大だ。
その先の夢として、個人の軸にあるのが、“日本の女性のロールモデル”になることです。ただ、ロールモデルって自分で名乗ってなるものではないと思っていて。自分の行動や積み重ねてきた実績が、結果的に誰かの背中を押すような存在になれたら、それが理想だなと思っています。“これ、私にもできるかも”と誰かが思えるような存在になれたら嬉しいです。」
心理学を活かした、より深い社会課題への取り組みも視野に入れている。
「もう一つ強く思っているのが、日本人の“幸福度”をもっと高めたいということです。大学時代に心理学を学んできたこともあって、ポジティブなマインドセットや心のあり方のようなものを、もっと早い段階から身につけられるようにしたいなと。」
「特に義務教育の段階は、全員が経験するものなので、ここに“幸せに生きるための考え方”が組み込まれたら、日本社会全体が少しずつ変わっていくんじゃないかと感じています。」
学生へのメッセージ:「自分と向き合うこと」の重要性
——現在就活している学生にアドバイスするとしたら?
「まずは、自分としっかり向き合ってほしいです。」
R.Kさんの言葉には、経験に裏打ちされた重みがある。
「世の中には企業ランキングや、『ホワイト企業・ブラック企業』といった第三者による評価が数多く存在しています。実際、私の周囲でも『給与が高く華やかに見えるから、とりあえず大手商社を受けておけば安心』といった声を耳にすることがありました。」
「でも、“とりあえず”で決めた仕事って、いざ社会人として働き始めたときに、続けていけるのかな?って思います。働くって、人生の大きな時間を使うことだし、周りの意見ももちろん大事ですけど、最終的にその選択に責任を持つのは自分自身なので。」
優先順位とタイムマネジメントのコツ
実践的なアドバイスとして、R.Kさんは効率的な就活戦略についても語った。
「就職活動においては、タイムマネジメントが非常に重要だと感じました。エントリーや選考の締切が重なる中で、すべてに応募しようとすると無理が生じてしまいます。そのため、優先順位を明確にしながら、自分がどのタイミングでどのように動くべきかを考える必要がありました。大学の授業や日常生活、インターンシップと並行して進めることになるため、やみくもにエントリーするのではなく、自分にとって最適な環境はどこかを見極めたうえで、的を絞って行動することが大切だと感じています。」
自分のWillを見つける重要性
「私は就活中、“気になる会社があったらまず社員の方に話を聞いてみる”というのを大切にしていました。話をする中で、“自分が何に興味を持っていて、何をしていると楽しいのか”“どんな強みを活かせそうか”といったことが、少しずつ見えてきたんです。」
「そうやって自分と向き合うことで、自分が大事にしたい“Will(意志)”がどこにあるのかが、だんだん見えてくると思います。それが明確になると、企業とのミスマッチも減りますし、自分の価値観に合った会社に出会えれば、きっと社会人になってからも、無理なく、幸せに働けると思うんです。」
まとめ
R.Kさんの就職活動の軌跡からは、「早期に動く力」「直感に基づく判断」「自己理解を深める姿勢」が、キャリアを考えるうえで重要な要素であることが見えてくる。大学2年の冬、カナダ留学中に感じた将来への漠然とした不安からスタートした就活は、マイクロソフトでの2ヶ月間のインターンシップを経て、「成長」と「直感」に軸を置いた独自の価値観を形成する過程へとつながっていった。
偏差値や社会的評価に引っ張られがちな進路選択において、R.Kさんのように自分の軸で環境を選ぶ姿勢は、多くの学生にとって一つの参考になるだろう。ITという未経験の分野への挑戦や、心理学の知見を活かした関わり方、将来的な社会課題への意識など、いずれも自身の関心と向き合った結果生まれた選択である。
「最終的に自分の人生に責任を持つのは自分」——R.Kさんの言葉は、就職活動に取り組むうえでの大切な視点を与えてくれる。周囲の評価ではなく、自分の考えに基づいた意思決定を、少しずつでも積み重ねていくことが求められている。