はじめに|なぜ価値観重視の企業研究が大切なのか
就職活動において、企業研究は避けて通れない重要なプロセスです。しかし「何となく有名だから」「給与が良いから」といった表面的な理由で企業を選んでいる学生も少なくありません。これだと、入社後にミスマッチを感じる可能性が生まれてしまいます。
実際に、厚生労働省の調査によると、新卒社員の約3割が3年以内に離職しているという現実があります。この背景には、企業研究が不十分で、自分の価値観と企業文化がマッチしていなかったことが大きな要因として挙げられます。
価値観重視の企業研究をおこなうことで、単なる就職ではなく、長期的に充実したキャリアを築ける、自分らしい働き方を見つけることができます。本記事では、価値観を軸とした効果的な企業研究のやり方を、具体的なステップとツールを交えながら詳しく解説していきます。
企業研究のやり方とは?
企業研究のやり方は、従来の「企業情報を調べて覚える」という受動的なアプローチから、「自分の価値観と企業の特徴を照らし合わせる」という能動的なアプローチへと変化しています。
効果的な企業研究のやり方を実行するためには、以下の3つの要素を統合的に分析することが重要です。
1. 自己理解の深化: まず自分自身の価値観、強み、将来のビジョンを明確にします。これにより、企業選択の軸が定まり、ブレない就職活動が可能になります。
2. 企業の本質的な理解: 表面的な企業情報だけでなく、実際の働き方、企業文化、社員の価値観まで深く掘り下げます。公式情報だけでなく、現場の声や実体験を重視することがポイントです。
3. マッチング分析: 自分の価値観と企業の特徴を定量的・定性的に比較分析し、最適な選択をおこないます。単純な好き嫌いではなく、論理的な判断基準を設けることが大切です。
このプロセスを通じて、入社後のミスマッチを防ぎ、長期的なキャリア満足度を高めることができます。
STEP0: 企業研究の前に自分の価値観を整理しよう
企業研究を始める前に、まずは自分自身の価値観を深く理解することが不可欠です。価値観が曖昧なまま企業研究を進めても、適切な判断基準を持てず、結果的に表面的な情報に左右されてしまいがちです。
働く上で大切にしたい価値観をチェックするやり方
BaseMeで提案する企業研究のやり方は、「業界→業種→企業」という従来の就活フローにとらわれず、「自分の価値観→マッチする企業」という新しいアプローチに重点を置いています。業界を横断して、自分にフィットする企業を見つける視点が大切です。ここでは、自分の価値観を見つめ直すための6つのタイプをご紹介します。これを入口に、自分に合った企業を探すヒントにしてください。
成長・学習機会重視型
新しい知識やスキルを身につけ続けたい人にとって、挑戦的な環境や充実した教育制度のある職場は非常に魅力的です。自らの成長と企業の成長が連動していると感じられる職場では、モチベーション高く働き続けることができるでしょう。こうした価値観に合う企業は、急成長中の組織や、個人の学びを大切にする文化を持つ企業など、さまざまな業界に存在しています。
社会貢献・やりがい重視型
「誰かの役に立っている実感」や「社会に良い影響を与える」ということに価値を感じる人は、企業の掲げるビジョンや社会的な存在意義を重視します。このタイプに合う企業は、NPOや社会的企業に限らず、企業活動を通して社会課題の解決に取り組んでいる一般企業にも多く存在します。大切なのは、事業内容だけでなく、企業の本質的な目的に共感できるかどうかです。
ワークライフバランス重視型
仕事と私生活のバランスを大切にしたいと考える人には、労働時間や柔軟な働き方、休暇制度などに注目する傾向があります。育児や介護など、人生のさまざまな局面で無理なく働き続けられる環境を求める人にとっては、働き方改革に前向きな企業が有力な選択肢となるかもしれません。ただし、これは業界によって決まるものではなく、企業文化や制度設計による差が大きいため、個別の企業ごとの比較が重要です。
人間関係・チームワーク重視型
人とのつながりやチームで協力して成果を出すことに喜びを感じる人は、職場内の雰囲気やコミュニケーションのあり方を重視する傾向があります。風通しの良い文化を持つ企業や、互いに助け合う風土が根付いている職場であれば、居心地よく長く働くことができるでしょう。こうした企業は業種に関係なく存在しているため、実際に社員の声や文化を調べることが大切です。
挑戦・革新性重視型
変化を楽しみ、既存の枠にとらわれず新しい価値を創造したいと感じる人は、挑戦する文化や裁量の大きさを重視します。革新を推進する企業であれば、その意欲を発揮しやすく、成長スピードも実感できるかもしれません。こうした特徴を持つ企業は、IT業界やスタートアップに限らず、既存業界の中でも変革期にある企業や新規事業に注力している企業にも見られます。
安定性・継続性重視型
長く安心して働きたいと感じる人にとっては、制度の充実度や経営の安定性が重要な基準になります。予測可能な環境で、着実にキャリアを積んでいけることに安心感を持つ人も多いでしょう。こうしたニーズに応える企業は、大手企業や公共性の高い企業に限らず、地域密着型の企業や堅実な経営を続けている中堅企業にも存在します。
価値観の優先順位づけ
複数の価値観を持つことは自然なことですが、企業選択の際には優先順位を明確にすることが重要です。
価値観マップの作成方法・やり方
価値観マップは、自分の価値観を視覚的に整理するためのツールです。まず、上記の6つのタイプを参考に、自分が大切にしたい価値観をすべて書き出します。次に、各価値観を10点満点で評価し、重要度を数値化します。その後、関連性のある価値観同士を線で結んでマッピングをおこないます。最終的にトップ3の価値観を決定し、これを企業研究の軸として活用します。
価値観マップの作成例
譲れない条件と妥協できる条件の整理
働くうえで重視したい要素は価値観だけではありません。具体的な労働条件や環境についても、どんなことを重視するのか、何を柔軟に考えられるかといった視点で整理しておくと、企業選択の判断材料として役立ちます。たとえば、年収・残業時間・勤務地などの要素を、自分にとってどの程度重要かを考えてみましょう。
このように、価値観や条件に関する情報をあらかじめ整理しておくことで、選考や面談の場面でも自分の考えをブレずに伝えやすくなりますし、後悔の少ない企業選びにつながります。
STEP1: 企業の価値観や文化を調べる
自分の価値観が整理できたら、次は企業側の価値観や文化を深く理解すやり方を学ぶ段階に移ります。表面的な情報だけでなく、実際の働き方や社員の本音まで調べることが重要です。
企業研究のやり方①|調べるべきポイント
効果的な企業研究をおこなうためには、以下の4つのポイントを重点的に調査しましょう。
企業理念・ビジョンの実践状況
企業の公式サイトに掲載されている理念やビジョンは、その企業が目指す方向性を示していますが、重要なのは「実際に実践されているか」です。社長メッセージや役員インタビューの内容を分析し、実際の事業内容と理念の整合性をチェックすることが大切です。また、社員のインタビュー記事で理念への言及頻度を確認したり、CSR報告書や統合報告書での具体的な取り組み事例を調査したりすることで、理念の実践度を測ることができます。
社員の実際の働き方
求人票や会社説明会で語られる内容と、現場での働き方にギャップがあるケースは少なくありません。だからこそ、就活生にとって「実際の働き方をどう調べるか」は大きな関心ごとです。
たとえば、平均残業時間や有給休暇の取得率、部署ごとの働き方の差といった具体的な数字に注目することで、よりリアルな実態が見えてきます。こうした情報は、OpenWorkや転職会議など(後述「企業研究を深めるおすすめの情報源・ツール」の章参照)の口コミサイトで実際の社員の声から把握できるほか、有価証券報告書の「従業員の状況」欄でも一部確認できます。
さらに、リモートワークの実施状況や、昇進・昇格の基準、女性管理職の割合、育児休暇の取得実績といった視点からも、企業の柔軟性や多様性に対する姿勢が見えてきます。こうした情報は、企業の公式サイトや統合報告書、ESGレポートに記載されていることもあるので、幅広い情報源を組み合わせながら確認することがポイントです。
社内制度の活用実態
制度があることと、使われていることは必ずしも一致しません。就活生が企業を見極めるうえで大切なのは、その制度がどれだけ実際に活用され、社員にとって意味のあるものになっているかという点です。
たとえば、研修や教育制度については、受講率や受講後の満足度などをチェックすることで、単なる制度の有無以上の実態が見えてきます。また、メンター制度やOJTが実際に機能しているか、あるいは副業・兼業制度が形だけではなく利用されているかどうかも確認しておきたいところです。
こうした情報を得るには、先輩のOB・OG訪問で直接尋ねてみるのが効果的ですし、企業の採用ページや新卒紹介動画、またSNSでの社員発信などもヒントになります。評価制度の透明性や、公平な異動制度の有無についても、口コミサイトでの具体的な体験談や社員インタビュー記事などを通じて、実際の運用を確認してみましょう。
評価・昇進の基準と透明性
将来のキャリア形成を考える上で、評価基準の明確さは非常に重要な要素です。評価基準の公開度と具体性、年功序列か成果主義かの傾向、昇進に必要な期間と条件などを調査する必要があります。また、360度評価などの多面的評価の有無や、専門職コース・管理職コースなどキャリアパスの多様性についても確認することで、自分の将来像と企業の人事制度の適合性を判断できます。
企業研究のやり方②|調査に使えるツール
企業研究を効率的に進めるためには、適切なツールを活用することが重要です。情報源を4つのカテゴリーに分けて紹介します。
公式情報源の活用法
企業公式サイトでは、IR情報から業績、財務状況、将来計画を把握でき、採用情報では求める人物像、働き方、制度について詳しく知ることができます。ニュースリリースからは最新の取り組みや業界動向を、サステナビリティレポートからは社会貢献活動や環境への取り組みを理解できます。
これらの情報を活用する際は、単年度だけでなく過去3-5年の変化を追跡することが重要です。また、数値データは業界平均と比較し、抽象的な表現の背景にある具体的な取り組みを探ることで、より深い理解が得られます。
社員の生の声を聞くやり方・方法
多くの企業が採用サイトで社員インタビューを掲載していますが、これらは採用目的で編集されている点を考慮して読み解く必要があります。より生の声を聞くためには、OB・OG訪問が効果的です。大学のキャリアセンターを通じた紹介、LinkedInやWantedlyでの直接コンタクト、知人・友人の紹介など、様々なルートで接点を作ることができます。
OB・OG訪問では、入社前後のギャップについて、実際の1日のスケジュール、会社の良い点・改善してほしい点、キャリア形成の実例などについて質問することで、リアルな職場の実態を把握できます。
第三者情報の活用法
転職・就職情報サイトでは、OpenWork(旧Vorkers)で社員の口コミと評価を、転職会議では退職者を含む幅広い口コミを、カイシャの評判では給与情報や働きがいの評価を確認できます。業界分析レポートとしては、日経業界地図、東洋経済の業界分析、各種シンクタンクのレポートなどが有用です。
ただし、口コミ情報は主観的であることを理解し、複数の情報源で事実確認をおこなうことが重要です。また、極端にネガティブ・ポジティブな意見は割り引いて考える必要があります。
実際に企業を体験する方法
最も確実に企業文化を体験できる方法がインターンシップです。短期(1日-1週間)では企業概要の理解が、中期(2週間-1ヶ月)では職場の雰囲気や働き方の体験が、長期(2ヶ月以上)では実際の業務と成長機会の体験が可能になります。
その他にも、会社説明会(対面・オンライン)、オフィス見学会、業界セミナー・勉強会、若手社員との懇親会などの企業イベント・セミナーに参加することで、企業の雰囲気を直接感じることができます。
さらに、展示会・学会での企業ブース訪問、企業主催の競技会・コンテスト参加、CSR活動やボランティア活動への参加など、様々な接点を通じて企業理解を深めることが可能です。
STEP2: 自分の価値観と企業の特徴を照らし合わせる
企業研究で得た情報を、事前に整理しておいた自分の価値観と照らし合わせる段階に入ります。このステップは、企業に対する印象だけで判断するのではなく、深いレベルで「自分に合っているかどうか」を見極めるために非常に重要です。
価値観に沿って企業情報を分類する
まずおこなうのは、企業の特徴を自分の価値観に基づいて整理・分類する作業です。たとえば、「成長や学習機会を重視したい」という価値観を持っている場合には、研修制度の内容や挑戦機会の有無、キャリアパスの柔軟性などに着目して企業情報を分類していきます。
このように、自分の価値観を軸に情報を整理していくことで、企業情報が自分ごととして意味を持ち、比較・判断がしやすくなります。
ギャップ分析でズレの大きさを確認する
次に必要なのは、理想の働き方と企業の実態との間にどれくらいギャップがあるのかを見極めることです。すべてが理想通りの企業はほとんど存在しませんが、自分にとって最も大切な価値観の部分でのズレが小さいかどうかを確認することが大切です。
この作業は、譲れる点と譲れない点を自覚することでもあり、企業選びにおける判断の軸を明確にしてくれます。
将来の成長や変化も視野に入れる
企業の現状だけでなく、「この企業はこれからどう変わっていきそうか?」という視点を持つことも、長期的なマッチ度を見極めるうえで効果的です。
たとえば、今は自分の理想とややズレている企業でも、成長段階にある企業や変革期にある企業であれば、将来的に価値観に近づいていく可能性があります。経営方針や中長期ビジョンにも目を向けながら、自分のキャリアと企業の未来が重なるイメージを描いてみましょう。
価値観の不一致が生むリスクも想定しておく
企業との価値観のズレが大きいと、モチベーションの低下や職場への違和感、さらには早期離職につながることもあります。こうしたリスクを想定し、事前に対話の機会を設ける(OB・OG訪問など)、配属先の柔軟性や異動制度を確認するなど、リスク回避の行動をとっておくことも忘れてはいけません。
自分軸での企業選びが納得のキャリアにつながる
このように、表面的な企業イメージではなく、自分の価値観に照らして企業情報を分析することで、「なんとなく良さそう」ではなく、論理的かつ納得感のある企業選びが可能になります。
自分の価値観という軸を持ち、丁寧に選んだ企業と出会うことが、将来的に自分らしく働くキャリアの土台をつくっていくのです。
STEP3: 複数企業を比較して絞り込む
複数の企業について、これまでのステップで自分の価値観との照らし合わせができたら、いよいよ比較分析のフェーズに入ります。
ここでは、主観的な印象に頼りすぎず、論理的な判断ができるように可視化・定量化するやり方を紹介します。感覚だけで判断するのではなく、比較表やマトリクスを使うことで、より納得感のある企業選びが可能になります。
企業研究のやり方③|価値観マッチ度を可視化する方法
効果的な企業比較のためには、主観的な印象だけでなく、客観的な指標を用いた可視化が重要です。
1. 価値観マッチング表の作成
まずおこないたいのが、「価値観マッチング表」の作成です。これは、自分の価値観と企業の特徴を数値化して比較する表のことです。作成のステップを以下の表にまとめました。
ステップ | 内容 |
① 評価軸の設定 | STEP0で整理した「自分の価値観(トップ3)」を軸にします。各価値観を細分化して具体的な項目にします。(例: 「成長・学習機会重視」→ 研修制度 / 挑戦機会 / メンター制度 / 昇進スピード) |
② 重要度(重み)の設定 | それぞれの項目に対して、自分にとっての重要度を数値で設定します。(例: 最重要=10、重要=7、やや重要=5) |
③ 企業ごとの評価 | 各企業について、評価軸ごとに1〜5点でスコアをつけます。不明な項目は追加調査します。 |
④ スコアの集計 | 「評価点 × 重要度」をすべての項目でかけ合わせて合計します(=加重平均スコア)。これで企業ごとの比較が可能になります。 |
価値観マッチング表の作成ステップ
2. 企業比較マトリクスの活用
さらに、比較結果を企業比較マトリクスとして一覧化することで、各企業の特徴が一目で把握しやすくなります。以下の例に従って作成してみましょう!
企業名 | 成長・学習機会 | 働きやすさ | 社会貢献性 | 特記事項 | 懸念点 |
A社 | 42点 | 38点 | 20点 | 若手も海外挑戦あり | 配属リスク |
B社 | 35点 | 44点 | 30点 | 育休後の復帰率が高い | 昇進がやや遅い |
C社 | 40点 | 30点 | 25点 | ベンチャーならではの成長環境 | 安定性がやや不安 |
企業比較マトリクスの作成例
このように一覧にすることで、「どの企業がどの価値観に強いのか」「どこに自分の不安があるのか」が明確になります。
3. 最終判断の基準を決める
スコアやマトリクスをもとに、最終的な判断を下すための自分なりの基準を持つことが大切です。以下のような判断ルールを設けることで、ブレの少ない選択ができます。
判断基準の例:
- 総合スコアの高い上位3社を「第一志望群」とする
- 最重要価値観で4点以上を獲得している企業だけを候補に残す
- リスク要因が2つ以上ある企業は再検討または優先度を下げる
- 「将来性」や「社風の変化」など、長期的な視点も加味して判断する
ただし、最終的な企業選びは数値だけで決められるものではありません。実際に社員と話してみて感じたフィーリングや、説明会での印象、「なんとなくここはしっくりくる」という感覚も、大事にしてよい要素です。
論理と感情のバランスをとりながら、「自分が納得できる選択」ができるようにしましょう!
企業研究を深めるおすすめの情報源・ツール
企業研究の質を高めるには、信頼できる情報源を目的に応じて使い分けることが大切です。ここでは、無料で使えるツールから、直接的な情報収集の機会まで、企業研究に役立つリソースを幅広くご紹介します。
無料で使える分析ツール
企業の経営状況や将来性を理解するには、まず客観的な数値や公式情報に触れることが基本となります。無料で使える分析ツールを活用すれば、財務情報や企業の全体像を手軽に把握することができます。
財務・業績に関する情報を調べたいとき
企業研究を通じて、企業の安定性や将来性を判断するうえで、財務情報や業績データは欠かせません。売上や利益の推移、株価、事業内容などの数値的な情報を確認することで、企業の現在の立ち位置や経営状態を客観的に把握することができます。
目的 | ツール/サービス名 | 概要・特徴 |
基本的な財務指標を確認したい | Yahoo!ファイナンス | 売上、利益、株価などの主要財務情報がわかる。上場企業向け |
業界動向や企業ニュースを押さえたい | 日経電子版(無料記事) | 有料記事もあるが、無料でも一定の業界情報にアクセス可能 |
有価証券報告書を閲覧したい | EDINET | 金融庁が提供しており、決算情報や事業内容を詳細にチェック可能 |
信用情報や会社の基本データを知りたいとき
企業の信頼性や社会的な立ち位置を把握するためには、信用情報や基本データを確認できる公的・民間データベースの活用が効果的です。
目的 | ツール/サービス名 | 概要・特徴 |
企業の概要・信用情報を確認したい | 帝国データバンク(基本情報) | 企業の信用度、資本金、事業内容などの概要がわかる |
企業の基本データを見たい | 東京商工リサーチ | 非上場企業含む多数の企業情報が掲載されている |
ベンチャーや中小企業情報を探したい | J-Net21 | 公的機関運営。中小企業向け支援情報や事例も豊富 |
業界構造や主要プレイヤーをつかみたいとき
個別企業を理解する前提として、業界全体の構造や主要企業の動きを把握することも重要です。業界地図や団体サイトを使うことで、全体の中でのポジションが見えてきます。
目的 | ツール/サービス名 | 概要・特徴 |
グローバルな事業展開企業を知りたい | JETRO | 海外展開企業の情報、レポートが充実しており、輸出入動向もわかる |
業界の動向・課題を知りたい | 各業界団体の公式サイト | 最新統計や白書があり、信頼性の高い情報源となっている |
情報収集に役立つWebサイト・アプリ
企業の数字だけでなく、実際の職場の雰囲気や働き方についても知りたい方にとっては、口コミサイトやSNSが貴重な情報源となります。ここでは、リアルな社員の声や企業文化を知るために役立つWebツールを紹介します。
企業内部のリアルな雰囲気を知りたいとき
企業の理念や制度だけでなく、実際に働いている人たちがどんな価値観で仕事をしているのか、日々の職場の雰囲気はどうかといった「中のリアル」は、企業選びにおいて非常に重要です。採用情報だけでは見えてこない内側の様子を知るには、社員の口コミや体験談を参考にするのが効果的です。
目的 | ツール/サービス名 | 概要・特徴 |
社員の声を知りたい | OpenWork | 評価項目が細かく、年収や風土、やりがいなどが見える |
様々な企業の口コミを読みたい | 転職会議 | 中小〜大手まで広く網羅。ESや面接情報も掲載されることあり |
働きやすさや企業文化を比較したい | エンゲージ | 視覚的に見やすいスコアで、カルチャーの傾向がつかめる |
ビジネスニュースや社員発信をチェックしたいとき
変化の早いビジネスの世界では、最新の企業動向を把握することも企業研究に欠かせません。ニュースアプリや情報プラットフォームを使えば、業界トレンドや企業の方針をリアルタイムで掴むことができます。
目的 | ツール/サービス名 | 概要・特徴 |
専門家のコメント付きでニュースを読みたい | NewsPicks | 就活生にも人気で、企業の未来を考える視点が得られる |
企業動向や速報ニュースを押さえたい | 日経電子版アプリ | ビジネス全般の動きが早くわかり、通知機能も便利 |
海外企業や市場全体を把握したい | Reuters | 英語情報中心で、国際的な企業研究にも有効 |
社員や採用担当者とつながりたいとき
企業の中の人とつながることで、採用ページには載っていない本音や価値観を知ることができます。ネットワーキング系のツールを使えば、就活中の質問やアプローチの場も広がります。
目的 | ツール/サービス名 | 概要・特徴 |
企業の人と直接コンタクトしたい | 海外企業含む、社員と繋がれる。自己PRにも使える | |
働き方・企業の雰囲気を知りたい | Wantedly | ストーリーベースの発信が多く、カルチャーが伝わる |
社員や企業のリアルな発信をチェックしたい | X(旧:Twitter) | 採用担当や現場社員の声を拾えるほか、最新動向も掴める |
直接的な情報収集の機会
企業の実像を深く理解するためには、情報をインターネットや資料で集めるだけでなく、直接的な接点を持つことも重要です。たとえば、合同企業説明会に参加すると、一度に複数の企業の情報を比較できるため、効率的に選択肢を広げることができます。また、業界展示会では、最新技術や事業の方向性に触れられるほか、各企業のスタンスや課題意識を知る手がかりになります。大学が主催する企業研究イベントでは、選考に関係しないカジュアルな雰囲気の中で、企業の話を聞くことができるのも魅力です。
さらに、実際に働いている人と直接話す機会も非常に有益です。OB・OG訪問では、職場の雰囲気や実際の業務内容について、リアルな声を聞くことができます。企業見学会に参加すれば、社内の空気感や社員の働き方を自分の目で確認できるため、ミスマッチを防ぐヒントにもなります。インターンシップは、さらに長期間にわたって企業と関わることで、より深い理解と自己成長の機会を得ることができるでしょう。
このほか、大学のキャリアセンターは、求人紹介だけでなく、ES添削や面接練習などもサポートしてくれる頼もしい存在です。就職エージェントを活用すれば、志向に合った企業を紹介してもらえるだけでなく、就活全体の戦略設計にもアドバイスがもらえます。また、業界研究セミナーに参加すれば、専門家から業界の構造や将来性について体系的な解説を受けることができ、理解をより一層深めることができます。
まとめ|自分らしいキャリアの第一歩として
価値観を軸にした企業研究のやり方は、内定を得るための手段ではなく、「自分はどう働き、どんな人生を送りたいのか」という問いに向き合うプロセスそのものです。就職活動の中で焦点が当たりがちな企業に合わせる視点ではなく、自分の価値観に合う企業を見つけるという視点こそが、納得感のあるキャリア選択につながります。
本記事で紹介した企業研究のやり方を実践することで、志望動機の説得力が高まり、面接でも自信を持って自分の言葉で語れるようになるはずです。また、複数の企業を比較する中で、自分にとって本当に大切な条件が明確になり、企業選びで迷う時間が減る可能性もあります。その結果として、入社後のミスマッチや後悔といったリスクを低減できるだけでなく、長期的に見て、キャリアの満足度や働きがいの高さにもつながっていきます。
企業研究のやり方は一度覚えて終わりではなく、将来の転職やライフイベントの変化に応じて何度も活用できる生きたスキルです。特に価値観ベースで企業と向き合う姿勢は、働き方が多様化する今の時代において、揺るぎない判断軸としてあなたを支えてくれるはずです。
もちろん、企業研究には時間と手間がかかりますが、それはあなた自身への投資になります。丁寧に調べ、比較し、自分の考えと対話し続けるこのプロセスは、未来の自分にとってかけがえのない財産になるでしょう。
企業研究のやり方に正解はありません。大切なのは、就活の過程を通じて自分自身の価値観に気づき、言語化し、それを企業選びに反映していくことです。今だけでなく、これから先も、自分らしいキャリアを築いていくために、定期的に自分の価値観や働き方の理想を見つめ直し、アップデートしていく姿勢を忘れないでください。